円い箱 〜アトリエ朋便り 
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今日、6月8日は、アトリエ朋の創立記念日。
ただ単に、申請していた事務所登録の決裁が6月8日付けだっただけなのですが、
たまたまその日が、私の母の還暦の誕生日だったので、
「これは覚えやすい!」と、そのまま創立の日に決めてしまいました。
そんなわけで、本日、私の母は72歳に、アトリエ朋は12歳になりました。おめでとう。
あまり気負わずやってきたけれど、干支一巡とは感慨深いものがありますね。
我ながら、よく続いたなぁ・・・と思います。


独立する前、「いい家ってなんだろう?」と、ずーーーっと考えていました。
そして、その時出した結論は、
きっと、その家族が求めている家が『いい家』なんだろう。
自分のこだわりや作風を考えずに、常に白紙の状態でお客様と向き合おう。
何を求めているのか、そのメッセージをきちんと受け取れる設計事務所になろう。でした。
それが正しかったか、それが出来ていたかは、客観的に判断できませんが、
その気持ちを持ち続けることはできていたような気がします。

でも、あれから12年。
今日も今日とて考えています。「いい家ってなんだろう?」と。
これを考え続ける事が、設計をやっていくという事なのでしょうか。


せっかくブログをやっているのだから、
12年目に考えてる事を、記録として残しておく事にします。

CO2削減 省エネ エコ 長持ちする家 そして古くはバリアフリー。
そういうキーワードだけが一人歩きをして、
その本質が置き去りになってる気がしてならない住宅業界の現状に、
ここ数年、ずっと違和感を感じています。
そのひとつひとつは、とても大事な事だと分かっているのですが、
そこを目指して進んでる過程や、解決方法として出される答えに、
「そういうことなのか?」という「?」が、どうしても拭えません。

で、また悩むわけです。「いい家ってなんだろう?」と。

今回の原発事故を受け、この動きは間違いなく加速していくだろうし、
違和感を感じたままだろうが、なんだろうが、
受け入れていくしかならなくなる日も、遠からず来そうな予感。
そう思うと、少し気持ちが焦ります。
家というものが、どんどん息苦しくなってしまったらどうしよう。
地球環境を守るというお題目の元で、
かえって、人々が自然環境から隔離されてしまいそうで、とても不安です。


唐突ですが、13年目のアトリエ朋のテーマは「呼吸がラク」に決めました。
これは、古武術家・甲野善紀さんの言葉からの受け売りです。

「私が若い方々に申し上げたいことは、自分が最も呼吸しやすい世界を求め、
 あるいは造り出していって頂きたいという事です。」

例えば受験勉強のように、自分の実力を水増ししてまで無理して入り込んだ環境で、
ずっと息苦しく暮していては、大切な感性とか、感覚的なものを失ってしまう。
・・・という話の流れで、だから、それぞれが呼吸しやすいところで生きればいいんだ。と。
今の政治家や官僚など、エライ方達を例に出しながらのお話でしたが・・・(笑)。

この言葉に、私はヒョイッと救われたのです。
自分が、家族が、周りの人が、それぞれ日々の暮らしの中で、
そしてお客様が、建てたその家の中で、ついでに、その「建物」そのものが、
呼吸しやすいかどうか?で考えていく事で、いろんな決断がしやすくなるんじゃないか?
と、今はこのヒントに期待しています。
これからも、違和感は違和感のまま大事にして、考える事をあきらめないでいけたらいいな。


今まで以上にいろんなことに悩まされ、考えさせられるであろう13年目になるとは思いますが、
今日からまた1年、一歩一歩、地に足をつけて進んでいければと思っています。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。